「インスタ映え」や「忖度」が流行語の年間大賞に選ばれた2017年、「睡眠負債」という言葉もベスト10入りしました。政治や芸能の話題に関連した言葉が選ばれるなか、健康に関する言葉が選ばれたこの前後から、テレビや雑誌などのメディアでも睡眠の重要性を説く特集が組まれることが増えたように感じます。
「睡眠負債」は、米スタンフォード大学のウィリアム・デメント教授が提唱した言葉で、日々の睡眠不足が積み重なり、心身に悪影響を及ぼす可能性のある状態を借金に例えて表しています。では、そもそも睡眠はなぜそんなに重要なのでしょうか?
・体のメンテナンス
睡眠中はただ身体を休めているだけでなく、体内ではホルモンが分泌され、身体のメンテナンスが行われています。良く寝ると背が伸びるなどと言いますが、身体の発育を促す成長ホルモンは寝ている間に多く分泌されます。子どもは、寝ている間に成長ホルモンにより骨や身体がつくられ成長します。
大人の場合は、背は伸びませんが成長ホルモンは重要です。成長ホルモンは細胞の新陳代謝を促進し、ケガの治癒、骨や肌の修復と維持といった抗老化の働きを担っています。睡眠は美容にも関連していると言われるのはこのためです。
- 脳のメンテナンス
睡眠中は身体だけでなく脳も休息しています。睡眠不足が続くと、やる気が起きなかったり気分が悪くなったりするのは、身体の疲れもありますが、脳自体が休息を欲しているのです。
睡眠不足は、精神不安の原因でもあり鬱病などに繋がる可能性があります。
また、脳は記憶の処理も睡眠中に行います。日中に学んだことを脳に固定させたり、嫌な記憶を消去するといった作業が行われます。テスト直前に一夜漬けをしてもテスト後には既に覚えたはずのことを忘れてしまっていることがあるので、睡眠不足により学んだことが記憶として固定されていないからです。睡眠不足の場合、大脳の情報処理能力も滞るため、記憶力だけでなく判断能力も落ちてしまいます。
睡眠不足は、精神不安の原因でもあり鬱病などに繋がる可能性があります。
また、脳は記憶の処理も睡眠中に行います。日中に学んだことを脳に固定させたり、嫌な記憶を消去するといった作業が行われます。テスト直前に一夜漬けをしてもテスト後には既に覚えたはずのことを忘れてしまっていることがあるので、睡眠不足により学んだことが記憶として固定されていないからです。睡眠不足の場合、大脳の情報処理能力も滞るため、記憶力だけでなく判断能力も落ちてしまいます。
- 病気の予防
風邪を引いたとき、暖かくして良く眠ると治るといいます。これは、睡眠中に自己治癒力を促す成長ホルモンが放出され、身体の細胞を再生させて免疫力が高まるためです。免疫力が高まることはガン予防にも繋がります。
大まかではありますが、睡眠はただ身体を休めているだけでなく、このように身体の内部で様々な調整が行われています。
このように重要な睡眠ですが、不足するとどうなるのでしょうか。日本人の平均睡眠時間は諸外国と比較し短いと指摘されています。一方で、日本は世界的にトップの平均寿命を誇り、経済大国でもあります。日常生活が送れるのであれば、少しくらい睡眠不足でもよいのではないかとも思えますが、そうではありません。
米国のペンシルベニア大学とワシントン州立大学は、1日平均7~8時間の睡眠を取っている健康な男女を集め、3つのグループに分けて睡眠時間と注意力の関係を調べました。
2週間後、8時間睡眠のグループに比べ、睡眠時間が4時間と6時間のグループの人たちは注意力が欠如していることが分かりました。
6時間睡眠のグループは飲酒して酔っているときと同じような状態となっており、4時間睡眠のグループのなかには、テスト中に眠ってしまう人も現れたそうです。また、この2つのグループの脳機能は、時間が経つほど下がり続け、睡眠不足によるダメージは累積されるということも分かりました。
数日の睡眠不足を解消は、その後に休息をとればすぐに解消されるようですが、数週間、数カ月と続いた慢性的な睡眠不足の場合、その分長い間質の良い睡眠を取らないと完全には解消されないということも分かっています。
恐ろしいことに、身体は睡眠不足という状態にも徐々に慣れてしまうため、能力が低下していることに、自分では気づかないこともあるそうです。
では、人は一体どのくらい眠れば良いのでしょうか。
睡眠についてはまだ解明されていないことも多く、諸説ありますが、一般的に大人に必要な睡眠時間は7~8時間とされています。
一方で、あまりに長く睡眠を取ると、逆に肥満や糖尿病などの成人病にかかるリスクが高まり、死亡リスクも上昇するということも分かっています。とにかく眠れば良いということでもなさそうですね。
必要な睡眠時間には遺伝的要素も大きく関係しており、6時間ほどの睡眠で平気という人は、遺伝子に特定の変異があるという研究結果も出ています。
適切な睡眠時間は、個人差もあるため最終的には自分で自分に適した睡眠時間を見つけるのが一番良いようです。最近は、様々な睡眠計測アプリやディバイスが発売されているので、睡眠のしばらく睡眠の記録をつけてみるのも良いかもしれませんね。