現代人と疲労―なぜリカバリーが必要か―

疲れている人が年々増加していることを感じ、この社会では回復が追い付かくなっていると人々は気付き始めた。だからいまリカバリーを考えることが必要です。

人類は、長い進化の過程で夜は休み、昼は起きて活動するという昼行性の生活スタイルを身につけてきました。ところが現代社会では夜の間もライフラインを確保するために多くの人々が働いています。

グローバリゼーションの流れは地球規模の情報ネットワークを築き上げ、デジタル社会では夜の国と昼の国の垣根を取り外して24時間型の社会をもたらしました。その結果、十分に休めず、疲れが抜けずいつも休みたいという願望が増加しています。そのような背景の中、今年の4月には「働き方改革関連法案」が施行されました。長時間労働をなくし、場所や時間に対して柔軟に、公正な待遇で働けるような社会への変革の流れがおこってきました。

先進諸国の大都市で疲労解消のための休養に悩む人々が激増し、なかでも我が国の疲労事情は世界的にみても深刻で、国民の5人に3人は疲労を抱えて生活を送っていることが報告されています。さらに高齢化の進行を含めると休養に不満を感じている人々の割合は、多くなることが容易に予想されています。

なぜわが国の休養回復がこれほど脆弱で、早期に対応ができなかったのか?最大の原因は、歴史的背景からくる国民のメンタリティーにあると考えられます。明治以降の発展、また戦後の世界をリードするほどの復興は、国民の休みなく活動するという努力無くしてなしえない功績です。そこには勤勉で生真面目な国民性がありました。このような努力が常態化し、疲労を理由に休もうとすると「ずる休み」と受け取られることも多く、無理してでも働くことを美徳とする風潮が生まれたと考えられます。たとえば職場では、「体温が高い」ので、あるいは身体に「痛み」があるのでと言えば休むこともできます。しかし、「疲れているので休みます」と言ったらどうでしょう。「みんな疲れている。」と叱られるのがオチではないでしょうか。「疲労」は、「発熱」と「痛み」に並ぶ身体からのSOS信号です。この3つは、体内で異変が起きているサインです。このサインを見定め直ちに休息をとることで重篤な病気への移行を未然に防ぐことができます。「疲労」は、異変を知らせるSOS信号なのです。

ヒトの活動は、体内エネルギーの充電と放電を日々繰り返すことで支えられています。このエネルギーが不足してくると、エネルギーの消費を抑えようと活動抑制のために疲労感で自己防衛します。例えば、電気自動車や携帯電話は、夜間に電源コードを接続して朝には、充電を完了しています。そして、朝からこのエネルギーを放電し、夜まで使用した後、再度充電を行います。これは、我々ヒトととても似ていると思いませんか。充電をうっかり忘れたり、充電不足のまま利用すると十分なパワーを発揮できなかったり、時には昼間に電池切れを起こしてしまいます。

また、使用頻度の激しさや長期使用の充電池は、消耗や劣化がすすみます。そのような時には、新しい電池への交換、あるいは新たな商品に買い替えることを考えるでしょう。ヒトは、30年・40年・50年、さらにそれ以上放電と充電を休みなく繰り返し続けています。当然劣化も進むが、しかし電池交換することができません。だからこそ、我々は、自分自身にあった最適な充電方法を、言い換えれば休養・回復方法を考える必要があります。リカバリーとは、まさに充電ということになります。

自分自身のリカバリー法を見つけ出すこと無くして、この世の中ではもはや生き残れることは困難になってきているのかもしれません。