睡眠は健康や美容など体の様々なコンディションに影響しています。
その一つとして、睡眠は肥満の要因になると指摘されていますが、本当でしょうか。
睡眠時間と肥満の関係を示す実験として、2004年にスタンフォード大学が
ボランティア約1,000人に対して行った研究が挙げられます。
この研究では、睡眠時間が1日6~7時間の人の間では肥満度が比較的低く、
それより睡眠が長くても短くても肥満度が高くなるとしています。
さらに、睡眠時間が5時間の人は、8時間の人よりもグレリンの分泌割合が14.9%高く、
レプチンは15.5%低いという結果も示しています。
「レプチン」は、脂肪細胞で分泌され脳の視床下部に位置する食欲中枢に満腹という信号を
送る、食欲を抑える役割を果たします。
「グレリン」は胃から分泌され、食欲中枢へ空腹との信号を送る、食欲を高める役割を果たします。
シカゴ大学の調査では、睡眠時間が短い場合、ポテトチップスやケーキなど高カロリーで炭水化物の含有量も多いものを欲する傾向にあるとの結果が出ています。
これらの結果からは、睡眠不足で摂食ホルモンに変化が生じるということが分かります。
ただ、こうした実験期間は限られており、1年以上の長期間でも、摂食ホルモンが短期での実験と同じような数値の変化を見せるかどうかについては疑う研究者もいるそうです。
睡眠時間についても、人にもよりますが年単位でずっと短いということはなく、長めに取れる日と短い日があると思います。このように、睡眠時間の変化の摂食ホルモンへの影響も明らかにはなっていません。
では、摂食ホルモンの変化と実際の食欲の増加の関係はどうでしょうか。
睡眠不足の人に食事の画像を見せると、食欲や情動に関する脳の部位の動きが活発になることが分かっているそうです。
ただ、睡眠不足の際、より高カロリーで炭水化物の含有量の多いメニュー画像に対し強い反応が見られるものの、変化の様子は必ずしも摂食ホルモンの濃度とは関連性が見られないようです。
食欲の調整に作用するホルモンや神経は多岐にわたります。
例えば、抑うつ傾向のある人たちにも、体重増加や食べすぎの傾向がみられることがあります。
また、食欲が高まることが実際に肥満になってしまうほど食べることに繋がるのかという点も
意見が分かれるようです。大量に食べてしまうという行動は、食べすぎないように自制するための、情動制御の力が弱まっていることにより起こるのではないかという意見もあります。
睡眠不足の場合、情緒不安定になったり、欲求を抑える力が低下するという傾向もみられます。
総合すると、睡眠不足自体が体重の増加に直接結びついているかどうかは、まだ分からない部分が多いようです。
ただ、ホルモンバランスを崩し、一時的な食欲増加の要因ではあるため、
睡眠時間を十分にとることは大切です。